ある日はハチミツ、ある日は玉ねぎ

オランダ人女性とシンガポールで国際結婚した会社員が妻にこっそり日本語で綴るブログ

妻のごはんがごはんじゃない

夫として口に出すのは失礼だが、言わせていただきたい。
妻の作るごはんが、ごはんじゃない。
一時期よりもだいぶ改善したが、それでも妻がごはんを作る。と聞くと一縷の不安を感じるのである。
話は結婚する前、同棲時代に遡る。

 

 

ある日はハチミツ

赴任当初から私は、基本的に夕食は自炊をしていた。シンガポールには日本食のレストランがたくさんあり、しかもどこもそこそこ美味しいのだが、とにかく値段が高い。白米とみそ汁を付けた定食を食べようものなら、夕食で一人2000円程はかかる。もちろんローカルが営業している安い日本食もあるが、あまり美味しくはない。幸いコンドミニアムには調理器具や炊飯器が最初から備え付けられていたので、学生時代以来の自炊をしていた。これが結構ハマってしまい、料理本を見たりクックパッドに登録したりと、ちょっとした趣味のようになった。
妻と同棲後も、私は日本食が食べたいし料理も好きだったので、基本的に私が料理を作っていた。妻も日本食が好きだったので全く問題なかったし、私自身残業も少なかったので、終業後早々に帰宅し、夕食を作り、一緒に食べていた。
妻が料理が得意でないというのは知っていたし、私も毎食作ることに不満はなかったので、全く問題は無かった。

 

 

ある日は玉ねぎ

そんなある日、進行中のプロジェクトが山場を迎え、21時頃まで残業する日が続いた。遅くなる、と妻に伝えると、今日は私が夕食を作るね、と返答がきた。
普段料理をしない妻が頑張って作ってくれる!と嬉しくなった私は猛スピードで残業を終わらせて帰宅した。オランダ料理だろうか、もしかして日本食をこっそり勉強していたのだろうか、色々な期待を巡らし、心躍りながら玄関を開けた。
食卓で私が見たのは、茹でたじゃがいも(丸々)とキャベツだった。

 

食後、これはまずい!!(いや不味くはないのだが)と思った私は、肉汁じゅわ~のふっくらハンバーグをこねるかの如く、優しく妻に問い掛けた。
聞くと、オランダではこれに肉や魚の焼いたもの、パンを添えれば立派な夕食だそうだ。…そうなんですか?いや、仮にそうだとしても、その日の食卓には肉も魚も無い。
私から言わせれば、これは料理でなく素材だ。でも妻から言わせればどこからどうみても料理なのだ!
手を抜いている気など一切ないのである!

 

 

夫のごはんもごはんじゃないのかも

私と妻の間で揺れる料理という概念は、果たしていつ決着がつくのだろうか。いや、決着することは無いだろう。そしてこれからも、妻の作る料理は私の中で素材なのだろう。
(最近出た夕食は、ドリトス(市販)にアボカドディップを添えたグァカモーレ)
一つ言えることは、この認識の差異も笑って過ごせるような心こそが、夫婦関係を長く続ける秘訣なのだろう。
そして現在、私はただ茹でたジャガイモを夕食として食べることに抵抗が無くなったのだ。別途私がお米と、肉、魚料理を添えることによって。