ある日はハチミツ、ある日は玉ねぎ

オランダ人女性とシンガポールで国際結婚した会社員が妻にこっそり日本語で綴るブログ

シンガポール在住者がNetflixのSingapore Socialをこき下ろす

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11/22から配信されたNetflixシンガポール・ソーシャル。一話30分、全8話でシンガポールの若者6人を追ったReality Showである。
配信直後からシンガポール国内では「The HillとTerrace houseを混ぜてドブに捨てた番組」とか、「ひど過ぎて見るのを止められない!」とか、検索してもM Social Singapore Hotelしか出てこないだので散々叩かれているので、大のNetflixerである妻と一気に全話鑑賞。


結論から言うと、今年見た中では最低の番組。もっと言わせてもらうと、Netflixのオリジナルコンテンツでは最低の出来、ではないだろうか。
公式サイトの宣伝では、「恋愛、キャリア、そして家族との関係。小さな経済大国シンガポールで、社会の枠にはまることを拒み、自分の生き方を貫こうとする若者たちの素顔を追う」とあるが、私から言わせてもらうと「現実と向き合うことを放棄した金持ちの子供達が、中身の無い会話とゴシップをネタにパーティー三枚」といった感じ。一体Netflixは何が撮りたかったんだ?
「ある意味でCrazy(頭のおかしい) Rich Asianね!」と言い放った妻に激しく同意せざるを得なかった。


以下、極力ネタバレを避けたシンガポール・ソーシャルのココがダメポイント3点。

 

 

 

全く感情移入できない出演者

物語は、シンガポールの20-30代の若者6人を中心として進む。が、まずこいつら本当に元々知り合いなのか?というくらい、お互いがお互いを知らない。
だから会話の内容がとんでもなく薄い。出演者同士で深く知り合おうともしないので、視聴者も一人一人の人間性が良く分からないまま、話が勝手に進んでいく。物語中盤以降は、出演者それぞれの仕事や人間関係、家庭での悩みにフォーカスされるが、そもそも見る側としては出演者の事を全く理解できていないので、彼らの悩みに同情することができないのだ。

またNetflixは、出演者達をシンガポールの若者のアイコンとして映している。しかし彼らは、殆どのシンガポール人の生き方とは異なったライフスタイルを歩んできている。
超学歴社会で受験、就職戦争を勝ち抜き、一流企業に入り、自らの力でキャリアを切り開くシンガポール人のモデルスタイルとは違い、出演者の殆どが、裕福な家庭で生まれ育ち、20代後半に差し掛かっても未だに親の資産で暮らしながら仕事は趣味レベル(のクオリティ)。勿論、中にはTabithaやNicoleの様に自分の力でキャリアを築いた人もいるが、それは出演者のほんの一握りだ。
そもそも、シンガポール人でもそう多くない、ブルジョワ人生を送っている出演者に対して、更に人間性の深掘りも無ければ、一体誰が共感できようか。
シンガポール・ソーシャルでは、Terrace Houseやあいのりにある、出演者の日常を覗く楽しみが全く無いのだ。

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出演者の一人、Mae。ただの金持ちの娘、以上。でも言ってることは一番普通。

 

 

 
あざといほどに漂う台本ありき感

Netflixシンガポール・ソーシャルを「Reality Show」としているが、恐らく脚本はあるだろう。ただ、その進行と見せ方があまりにも不自然で、 “やらせ”を強く感じざるを得ない。
例えばMaeの大学進学の件は、明らかに番組用に用意されたトピックの一つだろう。番組内でのイベント(旧正月、I Light, Poloカップ等)を見るに、シンガポール・ソーシャルは2019年の2月から3月末の2か月間で撮影されている。20半ばまで何もせずだらだら過ごしてきた人間が、親に諭されてこの2か月間で急に大学進学を思い立つのはどう考えても不自然で、あまりにも唐突過ぎる。

また番組は、不自然な程にシンガポールのおしゃれスポットでの撮影を多用するあまり、くど過ぎて食傷気味になる。
基本的にシンガポールの中心部、それもマリーナ周辺で全部話が進むので、シンガポール在住者からしたら3話くらいでもう景色に飽きる。東京でいえば六本木周辺を延々と見せられる感じ。
シンガポール国外の人から見ても、最後には景色の代わり映えの無さに飽きてくるのではないだろうか。

 

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Park Royal Hotelのプールでの一コマ。ところで君たちいつ仕事してるの?

 

 

 

何の満足感も無い結末

出演者に共感できずとも、やらせでも、面白ければそれでいい。だがシンガポール・ソーシャル最大の欠点は、結局出演者が何がしたかったのか、また番組が何を見せたかったのか全く分からないまま全8話が終わることだ。
出演者達は、人生に於いて大切な何かを見つけるでもなく、ただ飲んで騒いでゴシップをして、どうでもいいことで悩み、薄っぺらい仲間意識で傷を舐め合い、また飲んで騒ぐだけ。
興味のないパーティーの動画を延々と見させられ、結末には何も無い、ある意味視聴者を裏切るエンターティメントに仕上がっている。
この番組で何が起こったか、と聞かれると、TabithaがMVを作った。ということしか私の頭には浮かんでこない。それくらい中身の無い番組である。

 

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毎日飲んでるんじゃないかってレベルでパーティーシーンの連続

 

 

 

 

 

ということで私の中では最悪な評価となったSingapore Social。好き嫌いは人によってあると思うが、2話くらい見てこれつまんないなー。と思ったら止めてよいと思う。それが延々と続くので。
ただし私は、途中からシンガポール人と同じく「ひどすぎて見るのを辞められない」状態に陥ったので、もしかしたら製作者はそれを狙っているのかも(そんなことない)。